観光事業へのシステムづくり

 日本政府は現在、観光立国の実現をめざしています。人口減少・少子高齢化の閉塞状況を打ち破るため、21世紀における日本の重要な政策の柱として、「観光立国推進基本法」に基づき2012年3月30日に「観光立国推進基本法」が閣議決定され、2012年7月31日に閣議決定した「日本再生戦略」でも11の成長戦略の柱の一つとして観光立国戦略が掲げられています。観光産業により莫大な雇用と消費を生み出す経済波及効果を図ろうとしています。しかし、未だ日本政府は具体的な策を打ち出してはいません。さらに、農林水産物、食品の輸出額を増やす事も念頭においていますが、生産を増やすだけで中国やアメリカにどのように勝っていくかの具体策がありません。個人的には、ただ生産を増やすことではなく、今の日本に一番重要な「安全で安心な」山の幸、海の幸を取り戻すことから始めることが観光立国実現への第1歩だと考えています。

 世界の旅行者が日本に何度でも旅行したい、来たいと思うシステムをつくらなければなりません。そのためには美味しい料理とその料理に用いる安全な食材が必要不可欠です。では、「安全で安心な」食を世界の旅行者に提供するにはどうすればよいか。まず、生活排水や農薬などで汚された山、川、海を浄化させることです。市町村単位の小さな集団で各地域がそれぞれの特色を活かし、壊れた自然を市町村単位で再生することから始めるべきです。高度成長期に工事を行ったコンクリートを壊して片づける、そうしてもとの自然を取り戻します。川底に張り付けたコンクリートや要らなくなったダムを取り除くだけでよいのです。新しいものを作る必要はありません。以前はたくさんの小動物が平和に生息していました。サルやタヌキ、イノシシ、シカなどが、今ではエサが無く人家に出てきて畑の野菜を取って食べ、イノシシは稲穂を食べています。山を元通りに戻せば、また人間と動物が共存できます。

 日本は工業でこれから雇用を増やすことはできません。なぜならば、すべての工場は人件費の安い外国に移転していくからです。働き口のなくなった日本人は出稼ぎ労働者として外国に移住しなければ職を得ることはできないでしょう。工場の移転先は、中国の次はインド、インドの次はブラジル、アルゼンチン、アフリカと、人件費の安い国へシフトしていきます。今こそ日本が大きく方向転換をする時です。待っていても、以前のように雇用を支えた工場は何年経っても戻ってこないのですから。

 ところで、日本のスーパーは生鮮食品から乾物類までなんでも売っていますが、私たちが食材を買おうとするときにはまずどこで採れたものなのかが一番気になります。国産か外国産かがまず気になり、値段が同じであれば間違いなく国産を選ぶ、これが自国である日本の安全への信頼だと思います。しかし、ワインを買うときはどうでしょうか。今日は家族の誕生日だから皆で美味しいワインを飲みたいというときは、いつの間にか値段は高いフランス産のワインを選んでいます。つまり、「安全、安心」で美味しければ、値段は高くても日本産のブランドを世界の人が買ってくれるということです。

 これからの日本は、市町村単位で、山、川、海の環境を整備して世界の料理が日本のどこの地方都市でも美味しく食べられる国づくりと、安全な食品や加工製品を作り世界に輸出することを目標にするべきです。「安全、安心」は大きなブランドとなり世界の人から高く評価されることになります。